批判的とはどういう意味か?

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大学では、「批判的に考えよ」(クリティカル・シンキング)、「批判的に読め」(クリティカル・リーディング)などのように、「批判的」という言葉がしばしば登場します。「批判」の代わりに、「批評」という言葉が用いられることもあります。

「批判的に検討せよ」という課題を与えられた学生は、欠点を並べることに終始しがちです。「批判的に」という指示を、「悪く言うこと」、「短所や欠点を指摘すること」だと思ったのでしょう。

また、「あの理論は批判が多い」としたり顔で論ずる学生も見かけます。槍玉に挙がっていることを「批判が多い」と表現したのでしょう。

これら二つの例は、「批判」という言葉を、「非難」、「批難」、「論難」などの否定的な意味のみで解釈されたことを表しています。一般的な意味としてはそれで正しいですが、学術分野においては、それよりも広い意味を持つ言葉でもあります。

それでは、大学における「批判的」や「批判する」とは、どういう意味なのでしょうか?

 

「批判」とは自分の頭でじっくり検証すること

「批判的に考える」とは、自分の頭でよく考えることです。やや強引に意訳すれば、教科書や世間の評価を鵜呑みにせず、納得ゆくまで、自分の頭で検証しながら考えることです。必要に応じて実験したり、自分でデータを収集して確認します。

「批判的に読む」とは、自分の頭で検証しながら読むことです。本に書かれていることが論理的に正しいか、大きな飛躍はないか、自分の経験に照らしても納得できるものかを考えながら読むことです。

これが大学における「批判的に」や「批判する」の意味であり、必ずしも短所や欠点を並べ立てることとは限りません。

また、「あの理論は批判が多い」と言うときに使われる「批判」は、確かに否定的な意味のみで使われることも多いですが、同時に、論じる価値があるという意味も暗に含まれていることに留意しておきましょう。論ずる価値がなければ、そもそも自分の頭でよく考えてまで批判する人などいないからです。

 

批判には3つの立場がある

さて、自分の頭で納得ゆくまで考えて検証した結果として、批判には3つの立場が存在します。

一つ目は、<反対>の立場です。先の例に登場した学生たちの「批判」は、<反対>の意味だったことになります。

二つ目は、<賛成>の立場です。実は、肯定的な評価を下すことも批判の一部なのです。

そして、最後の立場は<判断保留>です。その対象が自分自身の理解を超えていたり、評価の材料となる資料やデータが不足しているときは、無理に賛否を表明せずに<判断保留>の立場をとります。

どこまで検討できていて、どこからの評価が困難だったのかを整理することで、<判断保留>も立派な批評行為になります。

 

もし「批判的に検討せよ」という課題が出たら、マスコミの報道や教科書の記述を鵜呑みにするのではなく、自分の頭でじっくりと論理的に考えることだと受け止めましょう。必要に応じてデータや文献を参照したり、フィールドワークに出かけたり、実験を繰り返したりして、自分の考えを補強していきましょう。そして、自分の考えた道筋を整理し、3つの立場からいずれかを表明します。

これが「批判」の意味です。
 

参考文献

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(おわり)

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