青春とは何か?

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マスコミが作り出した青春の幻想

青春とはいったい何なのでしょうか? どのような日々が青春なのでしょうか?

例えば、『耳をすませば』[1]のような甘酸っぱい恋愛が青春でしょうか? 盗んだバイクで走り出した『15の夜』[2]、あてもなく線路の上を歩いた『スタンド・バイ・ミー』[3]などが青春でしょうか? それとも、『深夜特急』[4]のように海外を放浪するバックパッカー[5]が青春でしょうか?

このような青春と比べると、自分の学生生活が味気ないものに感じられて、落ち込んでいる大学生は少なくありません。しかし、がっかりするには及びません。なぜなら、これらは所詮フィクションだからです。
 

フィクションは、多くの人を惹きつけるために、誰もがうらやむような設定と劇的な展開で脚色されています。事実が元となった作品であっても、過剰な演出で彩られています。だから、そこに描かれた青春は、実際には経験できるはずのない絵空事に過ぎません。

また、私たちが青春ドラマに憧れるのは、ほとんどの人が経験できなかった青春がそこに投影されているからです。ドラマのような青春を実際に過ごしている大学生はほんの一部であり、大多数の若者は今日も平凡な日常を過ごしています。
 

美しく彩られた青春は、あくまでフィクションです。平凡な学生生活を過ごしているからといって、くれぐれも自分を卑下したり、苦しめたりしないでください。脚色された青春の理想像は排して、まずは、等身大の青春を模索することから始めることにしましょう。

 

本当の青春とは?

ここで、立花隆[6]さんの文章から青春を考えてみます。

青春というのは、それが過ぎ去ったときにはじめて、ああ、あれがオレの青春だったのかと気が付くものなのである。
テレビの青春ドラマの主人公のように、青春のまっただ中にいるときに、「ウン、これが青春というものなんだなァ」などと、自分でしたり顔にうなずくなどという場面は、よほど浅薄な精神の持主にしか起こりえないものである。
それが青春であるかどうかなど考えるゆとりもなく、精一杯生きることに熱中しているうちに、青春は過ぎ去ってしまうものである。

立花隆 『青春漂流』 講談社文庫 1988年 p.7

 
友達のなかには、交友関係が広くて、恋愛にも不自由せず、勉強も就職活動も順調で、毎日が充実している人もいるかもしれません。しかし、そんな絵に描いたような青春を過ごしている大学生は、圧倒的に少数派です。それに、一見して充実しているように見える学生も、案外ひとには言えない悩みを抱えているものです。
 

ほとんどの大学生はきっと、次のような日々を過ごしているのではないでしょうか?。

  • 漠然と苦しくて、思うようにいかなくて、苛立つ日々。
  • 不安で仕方がなくて、その原因も分からなくて、もどかしい日々。
  • 空回りして、みっともなくて、どうにもならない日々。

もし、このような日々を過ごしているのなら、おめでとう! それがまさに青春です! 実際の青春は、どこまでも苦々しく、格好悪くて、どうにもならないものなのです。

そのような境遇にあるときは、次のように考えて、自分を励ましてあげてください。

  • 「ちっとも思い通りにいかない今この瞬間こそ青春の証し!」
  • 「押しつぶされそうな不安の中で、自分はよくやっている!」
  • 「自分は今まさに青春を生きている!」

 
漠然とした不安にさいなまれつつも、いま自分がやれることに全力で取り組む。それが青春という時代の生き方です。
 

[1]『耳をすませば』
スタジオジブリ製作の劇場アニメ作品。1995年公開。その瑞々しい内容にジブリ最高傑作との呼び声も高い。鑑賞後、憂鬱になる人が続出することでも有名。
[2]『15の夜』
尾崎豊(1965-1992)のデビューシングル。80~90年代、若者の圧倒的支持を得る。今日でもカラオケ定番の一曲。
[3]『スタンド・バイ・ミー』
1986年公開のアメリカ映画。4人の少年たちが、線路づたいに“死体探し”の旅に出る、ひと夏の冒険物語。現在でも高い評価を得ている。
[4]『深夜特急』
紀行小説。沢木耕太郎の代表作。バックパッカーの間ではバイブル的存在。
[5]バックパッカー
(英 backpacker )低予算で諸外国を旅する個人旅行者を指すが、厳密な定義はない。
[6]立花隆
(たちばな たかし 1940 - 2021)ジャーナリスト・ノンフィクション作家。『田中角栄研究』、『「知」のソフトウェア』、『東大生はバカになったか』など著書多数。

(おわり) 

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