名文・名言の抜粋は危うい

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有名な書籍の一節だけを集めた本や、その一節だけを繰り返して音読する学習が人気を集めています。

しかし、これらの方法には大きな落とし穴があり、慎重であるべきです。なぜなら、抜粋された文章だけでは、意味が変わってしまう恐れがあるからです。

 

著者は、全体の文脈を考慮したうえで、その有名な一節を執筆しています。しかし、その一節だけが抜粋されると、前後の文脈が断たれます。その結果、著者の意図とは正反対の意味で受け取られてしまうことも少なくありません。

例えば、福沢諭吉の『学問のすすめ』といえば、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」が有名です。この一節をもって福沢は万民平等を説いたと解説されることがあります。

しかし、それは誤りです。その理由は、原書で「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」の数行先を読めば明らかです。ぜひ一度、確認してみてください。

これが、抜粋だけで分かった気になった失敗の一例です。

 

また、抜粋は、前後の文脈だけでなく、全体のリズムも失わせます。音楽でサビが盛り上がるのは、サビの前にAメロBメロがあるからです。もし曲にサビしかなければ、感情移入ができないまま、すぐに飽きてしまうでしょう。

文章も同じです。有名な一節だけを切り離して鑑賞していては、その背後に潜む深みを味わうことはできません。著者の意図や技巧は、むしろ、その一節の前後に隠されているものだからです。

 

だから、有名な名文や人気がある名言ほど、全文の中で確認するようにしましょう!

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(おわり) 

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